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Medapani Blog

メダパニブログ

王の帰還の話

家に帰ったら下の弟が帰ってきていてカレーを食べていた。彼はすでに家を出て安定した職に就いているどころか、齢20半ばにして入籍まで済ませた超真人間である。未だ実家の二階に住み着く僕と上の弟とは大違いの自立した大人なのだ。そんな彼が急遽食卓についたことによって僕の夕食の取り分が少なくなったとしても、至極当然文句は言えぬ。彼の帰省は王の帰還も同じなのである。平民どころか家畜にも劣る穀潰したる僕が、王に食料を奪われたとて非難できるわけがない。よって今晩僕はカレーのおかわりを一杯でガマンしたのである。えらい。

夕飯を済ませてからは、王が召されている仕事の話を聞いて「なるほどな」「それは大したものだ」などと偉そうに相槌を打っていたが、その僕の内心は「ああ、こいつはもう完全に兄を超えたな」という祝福と完敗の気持ちで一杯であった。聞いたこともない専門用語を駆使して仕事への熱意を語る彼の姿には、小学校の休み時間におしっこを漏らして僕に泣きついてきた頃の面影は少しもなかった。僕は我儘で欲張りで独裁的で良い兄ではなかったので今さら「ワシが育てた」という気はさらさらないが、人間の成長とは早いものだと感心してしまう。

王は母親の車で家まで送ってもらう予定だったが、母親がうっかり酒入りのチョコを食べてしまったので不可能となった。僕も一応運転免許を持っているため代行を頼まれたが、僕の免許はそもそもTSUTAYAの会員証を作るために取得したものであり、その後ろくに乗っていないので運転できないのである。はっきり言ってエンジンのかけ方もよく覚えていない。ドライブをDに入れる? ああ! そんなのあったあった!! ほんとにそれくらいのレベルである。

結局徒歩でバス停まで向かうことになって、僕はせっかくの機会なので見送りをしようと王に同行した。途中、結婚式を早いとこあげたいがお金がないのだということを聞いた。王はまだ入籍しかしておらず、挙式はしていないのである。聞けば司会者を雇うだけでも10万を超えるとからしい。他にもうちの母親や奥さんの親からあれやこれや言われているらしく、プレッシャーを感じてしまいキツいとのことだった。

僕は結婚したこともなければ予定もないので、当事者の気持ちになることはできない。が、あえて言わせてもらえば、結婚式というのはどれだけ家族がいようがどれだけ関わる人間がいようが、恋愛の延長線上のできごとであり、夫婦となる2人の問題だと思う。どうか周りの人間のことなど気にせず、2人が好きなように思うようにベストだと感じたタイミングでやって欲しい。主役は2人なのだ。この機会においては、何においても好きにする権利がある。祝う人たちはあくまでおまけで、あとからついてくるものなのだ。何も気にすることなどない。

そんな話を献上して「僕ってばいいこと言うなあ」と思っていたら「あ、バス来たわ」とさっさと乗り込んでしまった王はやはり大物である。立派な家庭を築いて欲しい。

おわり